コピーライター・こやま淳子

手書きとパソコン

私にとって、文章を書くことは、呼吸のように必要なことだった。
これはきっと人の性格とか脳の構造の問題かなと思うのだけど、
私は文字にして書き出してみないと自分の思考が整理できないタイプの人間のようで、
たぶんそのせいで、中学生くらいまでは寡黙なほうだったと思う。
人と何を喋っていいのかわからないのだ。

高校生くらいから、毎日自分の思っていることをノートに書き出すようになった。
日記というには支離滅裂すぎる。日々の記録ではなく、思考の吐露。
でもそれをするようになってから、私は人と喋るのが苦痛ではなくなった。
自分の考えをスラスラと言えるようになったのだ。

コピーライターになってからは、
日々の思考吐露に加えて、アイデアノートのようなものも書きはじめた。
仕事とは別の書きたい文章を毎日書く。
100字から500字くらいの感覚で、毎日物語を書いていた。
それをするとしないのとでは、その日の仕事の効率が変わった。
コピーのアイデアがどんどん出るようになるのだ。
今日はちょっと調子が悪いなと思うと、アイデアノートをつけていない日だったりした。
慌ててアイデアノートをつけると、また仕事の効率も良くなった。
頭を柔らかくする、柔軟体操のような感じで、私はその作業をもう20年以上も続けている。

一年ほど前、毎日こんなに膨大な文章を書いているのにデジタル化されていないのは
勿体無いんじゃないかと、ふと思った。
今まで書いた思考吐露ノートは、捨ててしまったものもあるし、
(あるとき急に私が死んだらこれをみられてしまうのかと恐れて実家のベランダで焼いたことがある。
ポリバケツに入れて火をつけたら、ポリバケツがフニャッと曲がったので慌てて水を入れた。
父親に見つかって「日記を焼いた」と言ったら、「そうか」とだけ言われた。 という変な思い出があります)
大量に本棚に入れっぱなしにしてたりもするんだけど、
それをいまさら打ち直すのは、もう不可能に近い。
だからここから書くものはすべてエヴァーノートに書こうと思った。
デジタル化しておけば、あとで手直しして、何かに使えるかもしれないし。

それから一年。なんだか私は日々の仕事がちょっと億劫になってきているのを感じた。
おかしい。前はこんなにコピー書くのに時間かからなかったし、
もっといいアイデアも出た気がする。
もしかしてこれは、手書きでノートを書かなくなってきたせいじゃないんだろうか。

真偽はわからない。
手書きをやめてから、なぜかパソコンに打ち込むノートも、サボりがちになっていた。
パソコンで打つ方が、手書きよりもよっぽど速く書けるのに。よっぽどラクチンなのに。

そんなわけで、最近また手書きを再開した。
そうしたら滞っていた思考が流れ出したような気がしている。
真偽はわからないけれど、そんな気がしている。

別に私は手書きを礼賛したいわけではないんだけど、
それはパソコンを打つのとはちょっと違う脳を使うんじゃないかなと思っている。
書くものにあまり効率とか、マネタイズできるんじゃないかとか、
そういうことばかり考えていると失うものもあるんだなと知った。

Next Post

© 2018 koyama junko